2017-12-15 (Fri) [長年日記]
_ ファイルオープンの罠
僕が書いたNet::FTPのコードに脆弱性報告があり、修正版がリリースされた。関係者のみなさん、ありがとうございました。
問題があったのは以下のようなコードだった。
def getbinaryfile(remotefile, localfile = File.basename(remotefile),
blocksize = DEFAULT_BLOCKSIZE, &block) # :yield: data
f = nil
result = nil
if localfile
if @resume
rest_offset = File.size?(localfile)
f = open(localfile, "a")
else
rest_offset = nil
f = open(localfile, "w")
ここでKernel#openを使っていたのが問題で、localfileが|で始まる文字列だと外部コマンドが実行されてしまう。
しかも、まずいことにlocalfileのデフォルト値はFile.basename(remotefile)なので、悪意のあるFTP上に|で始まる名前のファイルがあって、ディレクトリ内のファイルをすべてダウンロードするようなプログラムを書いていると、クライアント側でコマンドが実行されてしまう。パイプ以外ではopen-uriをrequireしているようなケースでも何かまずいことができてしまうかもしれない。
普段書き捨てのコード以外ではFile.openの方を使うのだけど、確認したところ1997年8月13日リリースのruby-1.1a0のころからKernel#openを使っていたようだ。
ちなみにopen以外にも罠があって、例えば
p File.read("|echo hello") #=> "hello"
のようにしてもコマンドが実行されてしまう。
これは、Fileクラスには実はreadは定義されておらず、IO.readが呼び出されるため。
他には、binread, write, binwrite, foreach, readlinesなども同様の罠がある。
わざわざFile.と書いてパイプをオープンしている意図的なコードはそうそうないと思うので、Fileクラスにパイプをオープンしないバージョンを追加してオーバーライドした方がよいのではないかと思うが、今さら2.5には間に合わないだろう。
当面は引数をFile.expand_pathでフルパスに展開するとか、先にFile.statするなどすれば、上記のような罠を回避することができると思う。